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HPVワクチン(シルガード9)のご案内【男性も接種可能です】

HPVワクチン(シルガード9)
接種のご案内
・当院のワクチン接種は、予約不要です。
・この度、新規の方への使用ワクチンを、輸入品「ガーダシル9」から国内品「シルガード9」へ切り替えました。
※すでに当院で「ガーダシル9」接種済の方は、2、3回目の在庫を確保しています。
※切替の理由はQ&Aの「シルガード9とガーダシル9の違い」を参照ください。
上野院塩尻院長はHPV(ヒトパピローマウイルス)の研究をHIVと並行して行っており、HPVワクチンに関して詳しくお話してくれます。
塩尻院長のHPVワクチンに関する論文はこちら→ https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8479121/
1.HPVワクチンとは?
HPV(ヒトパピローマウィルス)とは?
HPVは、主に性交渉によって感染するウィルスで、性経験のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。
「子宮頸がん」の原因となるウイルスであることはよく知られていますが、その他の癌(がん)やイボ(尖圭コンジローマ)の原因もなります。
◆HPV感染によって引き起こされる癌
男性器:陰茎がん
女性器:子宮頸がん、外陰がん、膣がん
共通:中咽頭がん(のどのがん)、肛門がん
HPVは性交渉により誰もが感染する可能性のあるごくありふれたウィルスです。
特に最近、咽頭がん(喉のがん)が増加というニュースをご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
近年、日本人の喫煙率は下がっているため、咽頭がんの増加はHPV感染(ウイルス感染)が原因だと考えられています。

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▲人口10万人あたりの中咽頭がんの罹患数(出典:大阪府がん登録)
HPVワクチンの効果は?
現状、HPVに感染した場合の治療薬はありません。そのため、ワクチン接種で予防することが有効です。
アメリカではHPV9価ワクチンが承認されて久しいですが、CDC(疾病対策予防センター)が発表した内容では、13歳から19歳の女子の子宮頸がんの発病例が83%も減少し、20歳から24歳でも66%減少したといいます。
また、10代-20代の女子の子宮頸がん検診では前癌病変の症例の減少、男女の性器・肛門の尖圭コンジローマもどの年代でも著しく減少していたと報告されています。
HPVワクチンの接種年齢は?男性は?
HPV9価ワクチンは、従来の「9歳から45歳まで」といった年齢の制限にかかわらず、性的活動があるすべての方に対して、年齢や性別を問わず推奨されています。
もともとアメリカではHPV9価ワクチンについて9歳から26歳の男女への投与を推奨していましたが、2018年10月にはさらに27歳から45歳の男女への接種も承認されました。これは、HPVワクチンによってHPV関連がんの発症リスクを抑えられる可能性が、さまざまな臨床研究で示されてきたことが背景にあります。現在では、たとえ高齢であっても性的活動がある方に対しては、年齢にかかわらず男女ともに接種が推奨されています。
◆男性が接種するメリットは?
男性へのHPVワクチン接種は多くの国(アメリカ、イギリス、オーストラリア等)で推奨されています。
男性のワクチン接種の目的は、主にこの2点です。
・男性本人のHPV感染による病気の予防(コンジローマ、陰茎などの癌)
・自分が感染源とならないことで、パートナーのHPV感染症のリスクを抑える
HPVワクチンを接種することは、ご自身とパートナーを守ることに繋がります。
2.ワクチンの料金と接種回数について
HPVワクチンの料金について
※当院では予約不要で接種可能です。お気軽にご来院ください。
初回費用:33,000円 (税込) + 診察料
2回目・3回目:各 33,000円 (税込)
HPVワクチンの接種回数について
【基本的な接種スケジュールは全3回接種】
・1回目から2カ月後に2回目、1回目から6ヶ月後に3回目を接種
❶ ⇦2ヶ月⇨ ❷ ⇦4ヶ月⇨ ❸
【当院では2回のみの接種も推奨しています】
HPV9価ワクチンは、3回接種を受けなくても十分な効果が期待できると報告されています。
WHO(世界保健機関)の予防接種専門家戦略アドバイザリーグループ(SAGE)は、HPVワクチンは、2回のみの接種であっても3回の接種と同等の効果をもたらすと発表しました。
これを受けて、当院では2回のみの接種も推奨しています。
接種スケジュール:1回目から6カ月後に2回目を接種(6ヶ月未満だと効果が不十分だと言われています)
❶ ⇦6ヶ月⇨ ❷
詳細は医師にご確認・ご相談ください。
3.男性で接種ご希望の方へ
HPVワクチン接種は、陰茎がんや肛門がん等の予防にもなることから、欧米各国では男性の方の接種も推奨されています。
そのため、当院では男性の方も接種可能です。ご自身とパートナーを守るために、男性の方にも積極的に接種していただきたいと考えております。
4.よくある質問
HPVワクチン2価・4価・9価の違いは?
HPVワクチンには2価・4価・9価と3種類ありますが、これは予防できるHPVウィルスの遺伝子型の数を表しています。
HPVには複数の種類の型があり、感染した型によって発病する可能性のある病気は異なります。
→16型、18型の予防
→6型、11型、16型、18型の予防
→6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型の予防
尖圭コンジローマは主にヒトパピローマウイルス(HPV)6型および11型によって発症するため、2価、4価または9価のどのHPVワクチンを接種していても予防が可能です。
一方、子宮頸がんなどのHPV関連がんには、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型といったハイリスク型の遺伝子型が関与しています。「サーバリックス」および「ガーダシル4」はこれらのうち一部の型(16型と18型)にしか対応しておらず、がん予防効果は約60%とされています。これに対し、「ガーダシル9」や「シルガード9」は7つのがん関連型すべてに対応しており、約90%のHPV関連がんの予防が可能といわれています。
HPVは他人にうつりますか?
HPVは基本的に性行為(キスやオーラルセックス含め)で感染します。
タオルやお風呂をシェアしたくらいでは感染しませんのでご安心ください。
日本のHPVワクチンの状況は?
日本ではこれまで、承認を受けているHPVワクチンは4価のワクチンだけだったので、海外からガーダシル9価を輸入していましたが、2020年7月に9価ワクチンである「シルガード9」が承認(認可)されました。これによって、日本国内で9価ワクチンが手に入るようになり、ほとんどのクリニックが取り扱えるようになりました。
日本におけるシルガード9の接種対象者は、以下の通りです。
✅ 定期接種(公費負担)の対象者
小学校6年生から高校1年生相当の女子(12歳~16歳)が対象です。
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2023年4月から、シルガード9が定期接種の対象ワクチンに追加され、この年齢範囲の女子は、無料で接種を受けることができます。
✅キャッチアップ接種(公費負担)の対象者
1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性で、過去にHPVワクチンの接種を逃した方が対象で、シルガード9を無料で受けられます。
2023年度は対象人口に対する実施率は約16%**と報告されており、積極的勧奨が再開された2022年4月以降、少しずつ改善しているものの、依然として低いままです。
✅任意接種(自己負担)の対象者
定期接種やキャッチアップ接種の対象外となる方も、任意でシルガード9の接種が可能です。
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従来の「9歳から45歳まで」といった年齢の制限にかかわらず、性的活動があるすべての方に対して、年齢や性別を問わず推奨されています。
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ただし、接種費用は全額自己負担となります。
シルガード9とガーダシル9
違いは?
HPV9価ワクチンには従来から「ガーダシル9」という輸入ワクチンがあります。
ガーダシル9とシルガード9は、成分的にはまったく同じもので、同じ会社(MSD社)が日本国内用にまったく同じ成分で製造したワクチンがシルガード9となります。ガーダシル9は国内未承認であるため、副反応(副作用)が出た場合の公的な補償はありませんが、輸入会社による保険制度があります。また、ガーダシル9は国内外で多数の接種実績があり、重篤な副反応が出ることは極めて稀であるとされています。
当院では、男性を含む多くの方にHPVワクチンを接種していただきたいという思いから、長らくガーダシル9を輸入し、使用して参りました。しかしこの度、厚労省からの輸入許可が下りない事態となりました。その理由としては、シルガード9という成分が同じ国内品が流通しているため、というものでした。
しかし、輸入品のガーダシル9には副反応等が起こった際には輸入会社による補償制度がありますが、シルガード9は男性の方は適応外接種となり、「医薬品副作用被害救済制度」の対象にならず、その他の補償制度もない状況です。
そのため、当院としてはガーダシル9の使用を続けたいところではございましたが、厚労省の方針に従い、使用ワクチンを切り替えることといたしました。当院ですでにガーダシル9を接種開始している方の、2回目、3回目の在庫は確保しておりますので、ご安心ください。
また、当院ではHPV9価ワクチンの男性への有効性も鑑み、男性の方も接種できます。※適応外接種となりますので、「医薬品副作用被害救済制度」「予防接種健康被害救済制度」の対象外となることを予めご了承ください。
他のワクチン(コロナワクチン等)と同時期に接種できますか?
どちらかのワクチンを接種した後2週間の間隔を空ければ、もう一方のワクチンを接種しても大丈夫です(コロナワクチン以外のワクチンも同様)。
これは、万が一ワクチン接種に対する副反応が出た場合にその判断をするためとなりますので、別のワクチンと同時期に接種することが原因で副反応がでたり、ワクチンの効果が減少するといったことはありません。
参考:厚生労働省Q&Aページ
5.最後に
HPVは性行為で感染するウィルスですが、一度感染した際の対応や、感染しないようにするために必要なことなど分からないことが多いですよね。
院長から分かりやすくお話しいたしますので、ぜひ一度相談に来てみてください。
当院は性感染症クリニックですが、ワクチンの接種のみでご来院される方もたくさんいらっしゃいます。
どうぞお気軽にご来院ください。
LINEをご登録いただければ、事前相談、来院予約が可能です。
【当院ではA型/B型肝炎ワクチン、HIVの予防内服の相談も受け付けております。】
▶ HIV予防薬PrEP (プレップ)について詳しくはこちら
国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センター(ACC)にて、HIV(エイズ)・性感染症の診療や研究活動に従事。HIVやPrEP、HPVをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供します。