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「デシコビ」をオンデマンドPrEP(プレップ)として服用するには?

公開日|2025.01.31

デシコビ(Descovy)は、HIV予防のためのPrEP(Pre-Exposure Prophylaxis)の一つとして使用される薬剤ですが、現在のところ、オンデマンド(性行為の時のみ服用する)使用についての推奨は臨床的判断などで医師が行なってはいますが、限定的です。

本ブログでは、デシコビを『オンデマンド』で内服するにあたって欧米の臨床研究の報告例やガイドラインと、当院の実績を元に解説したいと思います。

▶PrEPの概要・当院のPrEPについて

 

 

 

 
 

 

PrEPの現状について

PrEPの内服薬は主にツルバダ(Truvada)とデシコビ(Descovy)の2種類のどちらかで行われます。ツルバダは毎日飲むデイリーPrEPとオンデマンドPrEP(性行為の時のみ服用「2+1+1」)として一定のエビデンスを持つのに対し、デシコビに関しては、オンデマンドでの使用に対する臨床試験データがしっかりと揃っていないこともあり、アメリカのFDAの承認が未だ得られていない状況です。

しかし、近年EACS(欧州エイズ臨床学会)が出すガイドラインではデシコビ(F/TAF)のオンデマンドPrEP使用について述べています。EACSガイドラインでは、特定の状況下でデシコビ(F/TAF)のオンデマンドPrEPの使用を検討できると記載されています。

 

 
 

 

EACS(欧州エイズ臨床学会) guidelines 2024

EACSガイドラインの要点:デシコビのオンデマンドPrEP

・オンデマンドPrEPの標準「2+1+1」レジメン(性交の2~24時間前に2錠、24時間後に1錠、48時間後に1錠)は、強力な科学的根拠に基づいて推奨されており、MSM(男性間性交者)においては高い予防効果が確認されている。

・デシコビ(F/TAF)はオンデマンドPrEPとして検討可能、薬物動態(PK)研究では一定の効果が示唆されており、腎機能や骨の健康に配慮が必要な人には適している。

デシコビをオンデマンドPrEPとして使用すべきか?

・MSM(男性で男性と性交を持つ人)であれば、EACSの指針に基づき選択肢として考えられるが、膣性交(受け側)によるリスクがある場合は、オンデマンドPrEPとしてデシコビを使用することは基本的に推奨されてはいない。膣での性行為(受け側)で使用を検討する場合は、HIV専門医師と相談することが重要。自己判断ではなく医師の指導の下で行う必要があります。

 

 
 

 

CHAPS試験におけるデシコビのオンデマンドPrEPに関する臨床研究データ

CHAPS studyでは、PrEPのオンデマンド服用における複数の薬剤・服用方法の有効性を評価し、対象薬剤にはデシコビ(FTC/TAF)も含まれ、南アフリカおよびウガンダの被験者を対象とした薬物動態(PK)および薬力学(PD)データが報告されています。

【主な結果】

・すべての服用レジメンにおいて、デシコビ(FTC/TAF)を用いたPrEPは、包皮組織(foreskin explants)および末梢血単核球(PBMCs)内のTFV-DP(Tenofovir Diphosphate:有効成分)濃度がツルバダ(FTC/TDF)よりも高かった。

・「2+1」服用方法(性交前に2錠、24時間後に1錠の服用)は、2錠を単回服用する方法よりも包皮組織のTFV-DP濃度が高い傾向があった。

・性交の5時間または21時間前に、ツルバダまたはデシコビを2錠服用すると、ex vivo(試験管内)でのHIVチャレンジに対し、包皮組織の保護効果が確認された。

この結果は、デコシビのオンデマンドPrEPの可能性を示唆するものの、臨床試験データの蓄積が引き続き必要とされています。

Herrera C, Serwanga J, Else L, et al. Dose finding study for on-demand HIV pre-exposure prophylaxis for insertive sex in sub-Saharan Africa: results from the CHAPS open label randomised controlled trial. EBioMedicine. 2023;93:104648.

 

 

 
 

PHCにおけるデシコビのオンデマンドPrEP

当院では薬物動態に基づいて、デシコビでのオンデマンドPrEPを希望される方には処方してきました。

この5年間でデシコビを使ってオンデマンドPrEPを行った方は当院で約1,800名ですが、1人としてHIV感染者は出ていません。

そもそもリスクが無かったからなのではという疑問もありますが、実際の性交行動をアンケート形式で伺ったところ、約7割程度が不特定多数との行為が月に複数回あると答えたました。ハイリスクグループの方でもデシコビを使ったオンデマンドPrEPを行ってきたということになります。

 

 

 
 

院長が伝えるオンデマンドPrEPの柔軟な考え方

『オンデマンドPrEPは2-1-1という極端に短い飲み方だと指摘されてきました。デイリーPrEPの場合は、服用をストップする際には最後の性行為から1週間内服して服用中止します。オンデマンドPrEPでも、性行為の前に2錠内服したあと、2日間で内服を終えるのではなく(2-1-1)、1週間内服したほうがより安心・安全に予防ができるのではという声も上がっています(2-1-1-1-1-1-1)。このようにPrEPの服用を決められた飲み方ではなく、柔軟に考えて、少し服用の期間を延ばしてみてはどうでしょうか』

 

▶PrEPの概要・当院のPrEPについて

 
 
 
この記事を監修した医師

塩尻大輔

パーソナルヘルスクリニック院長
塩尻大輔

国立国際医療研究センターのエイズ治療・研究開発センター(ACC)にて、HIV(エイズ)・性感染症の診療や研究活動に従事。HIVやPrEPをはじめ、性感染症・性病検査に関する科学的根拠に基づいた正しい知識と、患者様の心に寄り添った医療を提供します。