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トランスジェンダーとHIV-PrEP【HIV予防/ホルモン療法中に服用できる?】
日本産科婦人科学会認定専門医、GI(性別不合)学会認定医
2019年よりトランスジェンダー外来を開始、2023年にはパーソナルヘルスクリニック(東京)と いだてんクリニック(大阪)にてジェンダー外来をスタート。
“あらゆるセクシュアリティに平等な医療を”モットーに診療を行っております。
PrEP×トランスジェンダー
なぜ、性病・HIV予防専門クリニックでジェンダー外来を始めたか。
それは、トランスジェンダーとセクシュアルヘルスケアは深い関係があるからです。
国際エイズ会議(2022,2023)で発表された研究により、トランスジェンダーの女性は、一般成人集団よりもHIV感染リスクが一般集団よりも66倍高く、トランスジェンダーの男性は約7倍高いという結果がわかりました。
トランスジェンダーで、性病やHIV/AIDS感染者が多い理由は?
(1)コンドーム使用率が低い
トランスジェンダー男性・女性は、腟・肛門性交時、コンドーム使用率が非常に低いと言われています。
子宮卵巣があるトランスジェンダー男性でも、男性ホルモン療法により月経が止まるため、「妊娠しない」と思う方も多く、コンドーム使用率が低いと言われています。
(2)病院受診のハードルが高い
トランスジェンダーにとって病院受診のハードルは非常に高いと言われています。
医療者に不信感がある人もおり、病院を受診してもHIVや性病に関する話題に触れたがらない人も多く、 適切な時期に必要な治療的介入がないことも感染拡大につながっているとも言われています。
HIV予防薬のPrEP(プレップ)は、トランスジェンダーにとって重要。
PrEPは、男性・女性ホルモン療法の効果を低下させません。
PrEPは、ホルモン療法中も内服可能です。
WPATH(世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会)のガイドラインでも、トランスジェンダーの方に対するPrEP内服の重要性について記載があります。
MSM(男性とセックスをする男性)の中でも、トランスジェンダー男性はPrEP使用率が低いことが問題視されています。
海外のジェンダー外来では、PrEPや性感染症の予防、避妊について説明を行う施設が多いのですが、日本ではその説明がされていないことが多いように感じます。
【参考文献】
トランスジェンダーにとってPrEPの重要性について
Golub, S.et al. (2019). High rates of PrEP eligibility but low rates of PrEP access among a national sample of transmasculine individuals.
Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes, 82(1), e1–e7.
Reisner, S. et al.(2019). High risk and low uptake of pre-exposure prophylaxis to prevent HIV acquisition in a national online sample
of transgender men who have sex with men in the United States. Journal of the International AIDS Society, 22(9), e25391.
トランスジェンダーのホルモン療法とPrEPについて
https://www.medicalnewstoday.com/articles/prep-for-transgender-people
https://www.aidsmap.com/about-hiv/interactions-between-prep-and-gender-affirming-hormone-therapy
トランスジェンダーと医療的ケアの問題について
Seelman, K. L.et al.(2017). Transgender noninclusive healthcare and delaying care because of fear: Connections to general health and mental health among transgender adults. Transgender Health, 2(1), 17–28
WPATH STANDARDS OF CARE VERSION 8ガイドライン