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HPVワクチン・ガーダシル9価について

上野院塩尻院長はHPV(ヒトパピローマウイルス)の研究をHIVと並行して行っており、HPVワクチンに関して詳しくお話してくれます。
塩尻院長のHPVワクチンに関する論文はこちら→ https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8479121/
目次
- 1. HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?
- 2. HPVの種類は?
- 3. HPVは他人にうつる?
- 4. ワクチンの推奨年齢は?男性は?
- 5. 日本ではHPV9価ワクチンは打てる?
- 6. ワクチンの料金と接種回数は?
- 7. 最後に
1. HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?
HPVは性行為で人から人へ感染するウィルスであり、HPVと関連する疾患は尖圭コンジローマと癌です。癌として知られているのが、女性では子宮頸がん、外陰がん、膣がん、男性では陰茎がん、そのほか男女に共通しているのが中咽頭がんと肛門がんです。
2. HPVの種類はどれくらいあるのですか?
HPV(ヒトパピローマウイルス)は100種類以上の型が知られており、大きく分けて「尖圭コンジローマを引き起こす型」と「がんの原因となる型」に分類されます。
一般に、低リスク型HPVが尖圭コンジローマの原因となり、高リスク型HPVが子宮頸がんなどのHPV関連がんの主な原因となります。
現在日本で利用可能なHPVワクチンは以下の3種類です:
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「サーバリックス」:2価ワクチン(HPV16型・18型)
高リスク型に特化し、子宮頸がん予防を目的としています。 -
「ガーダシル4」:4価ワクチン(HPV6型・11型・16型・18型)
尖圭コンジローマと子宮頸がんの両方に対応します。 -
「ガーダシル9(シルガード9)」:9価ワクチン(HPV6型・11型・16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型)
より多くの高リスク型をカバーし、がん予防効果がさらに高まっています。
このうち、尖圭コンジローマの予防に有効なのは、HPV6型・11型を含む「ガーダシル4」および「ガーダシル9」です。
また、子宮頸がんをはじめとするHPV関連がんの予防においては、「サーバリックス」や「ガーダシル4」は主に16型・18型に対応しており、約60%のがん予防効果があるとされています。
これに対し、「ガーダシル9」は16型、18型に加え5つの高リスク型(31・33・45・52・58)が追加されており、HPV関連がんの約90%を予防できるといわれています。
3. HPVは他人にうつりますか?
HPVは基本的に性行為(キスやオーラルセックス含め)で感染します。タオルやお風呂をシェアしたくらいでは感染しませんのでご安心ください。
4. ワクチンの推奨年齢は?男性は?
HPV9価ワクチンは、従来の「9歳から45歳まで」といった年齢の制限にかかわらず、性的活動があるすべての方に対して、年齢や性別を問わず推奨されています。
もともとアメリカでは、HPV9価ワクチンは9歳から26歳までの男女への接種が推奨されていましたが、2018年10月には27歳から45歳の男女への接種も承認されました。これは、HPVワクチンによってHPV関連がんの発症リスクを抑えられる可能性が、さまざまな臨床研究で示されてきたことが背景にあります。現在では、たとえ高齢であっても性的活動がある方に対しては、年齢にかかわらず男女ともに接種が推奨されています。
アメリカCDCの報告によると、HPVワクチンの接種により13~19歳の女子における子宮頸がんの発症率は83%、20~24歳でも66%の減少が確認されました。また、10代から20代の女子の子宮頸がん検診では前がん病変の発見率も大幅に減少し、男女を問わず、性器および肛門の尖圭コンジローマの症例も全世代で著しく減少したと報告されています。
5. 日本でHPV9価ワクチンを打つには?
日本ではこれまで、承認を受けているHPVワクチンは4価のワクチンだけだったので、海外からガーダシル9価を輸入していましたが、2020年7月に9価ワクチンである「シルガード9」が承認(認可)されました。これによって、日本国内で9価ワクチンが手に入るようになり、ほとんどのクリニックが取り扱えるようになりました。
日本におけるシルガード9の接種対象者は、以下の通りです。
✅ 定期接種(公費負担)の対象者
小学校6年生から高校1年生相当の女子(12歳~16歳)が対象です。
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2023年4月から、シルガード9が定期接種の対象ワクチンに追加され、この年齢範囲の女子は、無料で接種を受けることができます。
✅キャッチアップ接種(公費負担)の対象者
1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性で、過去にHPVワクチンの接種を逃した方が対象で、シルガード9を無料で受けられます。
2023年度は対象人口に対する実施率は約16%**と報告されており、積極的勧奨が再開された2022年4月以降、少しずつ改善しているものの、依然として低いままです。
✅任意接種(自己負担)の対象者
定期接種やキャッチアップ接種の対象外となる方も、任意でシルガード9の接種が可能です。
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従来の「9歳から45歳まで」といった年齢の制限にかかわらず、性的活動があるすべての方に対して、年齢や性別を問わず推奨されています。
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ただし、接種費用は全額自己負担となります。
6. ワクチンの料金と接種回数は?
HPV(9価)ワクチンは全3回接種します(1回目から2か月後に2回目接種、1回目から6か月後に3回目)
初回費用:35,200円 33,000円 (税込)+ 診察料 2500円 (税込)
2回目・3回目:35,200円 33,000円 (税込)[ご相談のある方は再診料1000円がかかります]
【当院では2回のみの接種も推奨しています】
HPV9価ワクチンは、3回接種を受けなくても十分な効果が期待できると報告されています。
WHO(世界保健機関)の予防接種専門家戦略アドバイザリーグループ(SAGE)は、HPVワクチンは、2回のみの接種であっても3回の接種と同等の効果をもたらすと発表しました。
これを受けて、当院では2回のみの接種も推奨しています。
接種スケジュール:1回目から6カ月後に2回目を接種(6ヶ月未満だと効果が不十分だと言われています)
❶ ⇦6ヶ月⇨ ❷
詳細は医師にご確認・ご相談ください。
⇒HPVワクチンについて
7. 最後に
HPVは性行為で感染するウィルスですが、一度感染した際の対応や、感染しないようにするために必要なことなど分からないことが多いですよね。
院長から分かりやすくお話しいたしますので、ぜひ一度相談に来てみてください。
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★当院ではHIVの予防内服の相談も受け付けております。
HIV予防薬PrEP (プレップ)に関して知りたい方はこちらをクリック⇒ PrEPジェネリック